今回はEconsultancyに投稿されたPatricio Robles氏の記事「10 common social media mistakes(ソーシャルメディアでよくある10の過ち)」をご紹介したいと思います。

以前にも、似たようなタイトルのものとして「企業がソーシャル・メディアで避けるべきこと」という記事を紹介しましたが、それと今回のものでは内容も大きく異なりますし、よくまとまっていましたので、ソーシャルメディアを活用されている方やこれから活用しようという方には一読の価値があると思います。ここでは10の項目からそれぞれ一部を引用し、私なりの解釈で説明を加えていきたいと思います。

Robles氏の挙げている項目は次の10項目です。

  • フォローしすぎること
  • 利用できるものを全て利用すること
  • 中途半端にやめてしまうこと
  • 従業員を訓練しないこと
  • あなたのプロフィールを新入りや低水準の従業員に管理させること
  • ソーシャルメディアが無料であるかのようにふるまうこと
  • 公開してから考えること
  • 指標を考慮しないこと
  • ROIは計算することができないと見なすこと
  • 世間の人びとに期待すること

1. フォローしすぎること

ソーシャルメディアは故あって「ソーシャルな」メディアと呼ばれているが、とんでもない数のユーザーをフォローすることは「ソーシャル」なことではない。特に短期間では。

「ソーシャル」という言葉は関係性の構築という意味を含んでおり、管理ができないほど多くのフォローを行うことは決して賢明な行為とはいえません。

私が現在、最もアクティブに活用しているのはTwitterですが、最初は50人程度をフォローするだけでもとても大変でしたが、時間と共に、慣れやコツなどを自分なりに身につけていき、今では800人を超えるフォローをしていても、それ自体はそれほど苦にはなりませんし、むしろ得るものが大きいと思います。

不慣れなうちは限界までフォローするのではなく、少し慎重にフォローやフレンドの数を増やしていった方が良いと思います。とにかく数を増やすというスタイルはソーシャルメディア特有の関係構築がおざなりになる可能性があります。

2. 利用できるものを全て利用すること

ソーシャルメディアを「正しく」理解するのは見た目よりも難しい。必要なもことのひとつはつまり、フォーカスだ。

最近ではソーシャルメディアといえば、TwitterやMixi、あるいはFacebookのようなものが挙げられがちですが、ソーシャルメディアはもちろんそれだけではありません(そのごく一部は当ブログのリンク集でも紹介しています)。

人気があるもの、競合や友人が利用しているものを全て利用するのではなく、最も自分に適しているものに参加し、ノウハウ等を蓄積していくべきですし、複数のソーシャルメディアを利用する場合も、本当にそれが必要かどうか、運用していけるかどうかを十分に考察してからにするべきでしょう。

3. 中途半端にやめてしまうこと

原文では”Falling off the wagon(水運搬車から落ちること)”となっており、意味としては一旦誓った内容を違えてしまうことをさすようです(例えば禁酒を破るといったような)。ここでは「中途半端にやめてしまうこと」といったような意味で使われています。

ソーシャルメディアの試みは始めるのは簡単だが、継続が難しい。つまり、ソーシャルメディアは行き先のない旅行なのだ。

ビジネスで利用する場合は長期の運用を念頭に置いて利用を始めるべきでしょうし、いったん始めたなら、それはずっと継続される必要があります。とりわけ短期的なキャンペーンではなくブランディングなどを目的としている場合は中途半端に活用をやめてしまうことは逆にブランドを傷つけてしまうことになる可能性があります。

4. 従業員を訓練しないこと

従業員がいかにふるまうかが、企業のソーシャルメディアの評判に大きく影響する。

どこまで本当かは別として、いきなり企業名と本名を出して、ソーシャルメディアの活用を始めてしまう担当者を見かけることが多いように思います。ソーシャルメディアを利用する場合、その多種多様なプラットフォームとユーザー層によって、それぞれのメディア毎に必要な知識やスキルは全く異なってきます。

多くのソーシャルメディアはアカウントを複数取得することができますし、日本ではハンドルを使うことも一般的です。まずは、個人利用やハンドルによる利用で、ある程度訓練/練習を終えてから、利用するべきだと思います。

5. あなたのプロフィールを新入りや低水準の従業員に管理させること

あなたのソーシャルメディアでの存在感は新参の、経験に乏しく、会社の細部に至る知識を欠き、あるいは会社の成功に大きく投資していない者の手に委ねるにはあまりにも貴重すぎる。

おそらく、個人アカウントや企業の代表的アカウントをいきなり、ソーシャルメディア活用経験の全くない新入社員や他人に任せてしまう人はいないとは思うのですが…。重要なアカウントを新入社員や未経験者に委ねるべきではありませんし、もちろん外部の人間に委ねるべきでもないでしょう。少なくとも、ある程度の責任をとれる人が管理すべきだと思います。

6. ソーシャルメディアが無料であるかのようにふるまうこと

ソーシャルメディアは常に誰かの時間を必要としているし、ある種の経営資源が別に割り当てられる必要があるかもしれない。

ソーシャルメディアは業務の合間に適当に取り組めるものではなりませんね。特に、企業アカウントの場合には。アカウントの取得が無料であることと、ソーシャルメディアの運用が無料かどうかは別問題です。企業の場合、運用に割り当てられるべき時間や、人材、資料、素材などを適切に考慮するべきでしょう。

7. 公開してから考えること

これはソーシャルメディアに限った事ではありませんね。Web業界ではよく見かけますが、修正は後からできる、まずは公開しようとか、とりあえず公開してから、それに意味や理由をつけようというのは、まず良い結果には結び付きませんし、むしろマイナス面が多いでしょう。時間は準備にこそかけられるべきだと思います。

残念なことに、多くのソーシャルメディアサイトのリアルタイム性は「公開してから考える」力学を促進する。しかしながら、(…)時には、何もしない方が良いのだ。

ソーシャルメディアに関してはTwitterを始めとしてリアルタイム性が特徴的なソーシャルメディアも増えてきていますが、それは必ずしも即時的な対応が求められているとは限りません。例え140文字のツイートであってもその内容や意味、周囲に与える影響などを考えた上で行う必要があるでしょうし、上の引用にもあるように時に何もしない方が良い結果が生まれることもあるでしょう。

8. 指標を考慮しないこと

測定はあらゆる他の企業努力と同様にソーシャルメディアにも重要である。

ソーシャルメディアは、他者の作成したプラットフォームを利用することや、リアルタイム性など、指標を適切に測定するのが容易ではありません。しかし、指標を考慮せず、ただ状況的に対応したり惰性で運用するのは避けられるべきでしょう。

9. ROIは計算することができないと見なすこと

ソーシャルメディアの重要性を認識している企業は多いが、同時にソーシャルメディアではROIは計算できないと考えている企業も多いようです。

それは、ソーシャルメディアのあらゆる効果に関して、ビジネスによってなされた努力が結果として最終収益に相関性を持たせられる具体的な価値を生み出さなくてはならないゆえに過ちである。

先の「指標を考慮しないこと」とも関連すると思うのですが、ビジネスである以上、解析などを通じて、それぞれにROIを計算するようにしなくてはならないという意味でしょうか。

10. 世間の人びとに期待すること

ここでは、ソーシャルメディアを活用すれば直ちに世間の人びとがブランド信仰を抱いたり、口コミを広げてくれるわけではない、という意味ですね。

ソーシャルメディアはビジネスにとって多くの素晴らしいことを成しうるが、限界がある。例えば、必ずしも売り上げを促進させることやブランド信仰を増大させること、あるいは、口コミを作りだすことにもならない―とりわけ一夜にしては。

ソーシャルメディアにおいて存在感を増すには、地道な努力の継続が必要です。運良く口コミにのって広がっても、それが一時的なものであっては意味がありませんし、話題のブランドから信頼のブランドへと変えていくのは容易ではないでしょう。別のかたちで既にブランドが確立している場合でも、ソーシャルメディアでの成功は同じものではないでしょうし、逆に既に有名であるがゆえのリスクも大きいでしょう。

世間に期待するのではなく、世間の期待に応えるようなかたちで健全かつ堅実な運営を心掛ける必要がありそうです。

まとめ

以前紹介した「企業がソーシャル・メディアで避けるべきこと」が担当者レベルでのソーシャルメディアの活用に焦点を当てた者であったのに対し、今回はより広い視点から捉えられたものですね。

ソーシャルメディアはその性質上、企業の顔として認識されることが多くなります。ソーシャルメディアでの失敗が企業のブランディングやマーケティングそのものの失敗のように捉えられる可能性もなくはありません。特に今後、ソーシャルメディアがますます一般化すればなおさらです。

私はソーシャルメディアを活用する一方で、ソーシャルメディアの利用を積極的に促す立場にもありますが、あえて、ソーシャルメディアの活用には慎重になるようアドバイスすることが多いです。ただ流行りだからとソーシャルメディアに参加すると、大きな失敗を犯す可能性もあります。

そうした可能性を減らすためにも、現在ソーシャルメディアを利用している方だけでなく、ソーシャルメディアの利用を検討している方も、上の10項目の内容を慎重に考慮してみてはいかがでしょうか。